Q 食品の安全性では残留農薬が最も心配ですよね?

『冷凍食品についての素朴な疑問シリーズ』
残留農薬のことをもっと知りましょう。残留農薬は恐るるに足らず!

Q 食品の安全性では残留農薬が最も心配ですよね?

A. 残留農薬のことをもっと知りましょう。残留農薬は恐るるに足らず!

1.残留農薬のポジティブリスト制度
2.農薬の残留基準値と安全性
3.残留農薬違反の実態
4.一般市民と専門家の認識の違い

 以前にも書きましたが、一般の皆様に食品の安全性について不安に感じることは何かというアンケートを取ると、トップ5にいつも入るのは、残留農薬、食品添加物、輸入食品だと思います。しかし、専門家はそうは見ていません。それは後ほど述べるとして、私たちは不安に思うことをもう少し科学的に評価して日々の食生活を送りたいものです。

ここでは、残留農薬について、簡単に解説しますのでそれほど怖くないことを理解して頂ければ幸いです。

1. 残留農薬のポジティブリスト制度

 まず、残留農薬が基準値以上検出されると、その食品は法律違反として流通販売が止められますが、その法律について説明しましょう。もう10年以上前の2006年に、残留農薬を規制する法律としてポジティブリスト制度が施行されました。

法律なので難しい文章ですが次の通りです。

食品衛生法第11条第3項

農薬、飼料添加物及び動物性医薬品が、人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量(一律基準値0.01ppm)を超えて残留する食品は、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、又は販売してはならない。

 ただし、当該物質の当該食品に残留する量の限度について 食品の成分に係る規格(残留基準値)が定められている場合については、この限りでない。

 つまり、大原則は、健康に影響のない0.01ppm(1ppmは百万分の一)の一律基準値を超えると法律違反になるということです。ただし、残留基準値が決まっている場合はその値を超えるまでは許容されるということです。

 この法律ができるまでは、ネガティブリスト制、つまり原則規制がなくて、その中で残留してはならない農薬のみがリスト化され規制されていました。

2.農薬の残留基準値と安全性

 農薬がわずかとは言え、残留が認められていることに不安を持つ人がいらっしゃるかも知れませんが、残留基準値は非常に安全サイドで設定されています。

 下図は、農薬を摂取した場合のその健康に対する影響をグラフにしたもので、縦軸の健康影響は動物試験の結果から求めます。摂取しても微量では影響はなく、影響し始める最大の量を「無毒性量」といいます。又、毎日摂取し続けても影響の出ない量をADI(一日摂取許容量)といい、「無毒性量」に安全率100分の1を掛けた量です。知らずに残留農薬を摂取してしまった場合を想定すると毎日摂取するわけではないので、安全性を判断するには「無毒性量」と比較して判断するのが妥当と思われます。

 それではこうした摂取量と基準値との関係ですが、私たちが1日に食事として食べる穀物、野菜、果物などの量を調査で求め、それぞれに基準値案を掛けて合計を出し、それがADIの80%以下ならば、その基準値は適正とみなされ設定されます。従って、それぞれの基準値はADIに比べ非常に低い値に設定していることがわかります。

即ち、1つの食品で基準値を超えた場合でも、ADIを超えることはほとんどなく、安全性の観点からは問題ないと言えます。
 

3.残留農薬違反の実態

 こうした残留農薬の安全性を踏まえ、中国からの輸入品の中で、残留農薬が不適格で違反となった事例の内容を調べその危険度を推定したいと思います。

 厚生労働省の平成28年度と29年度の輸入食品監視統計によると、中国食品の違反で残留農薬を原因とするものが2年間の合計で52件ありました。その内、一律基準値違反(食品衛生法第11条第3項)が25件、残留基準値違反(食品衛生法第11条第2項)が27件ありました。もちろんこれら違反した食品は国内には流通していません。

違反した食品1品々々の基準値と実際に検出された値を52件につき単純平均として計算すると、一律基準値違反は基準値0.01ppmに対し違反食品は0.04ppm、残留基準値違反は基準値0.03ppmに対し0.11ppmの結果でした。いずれも、基準値に対し約4倍の違反で、ほとんどの場合ADIには届かず、もちろん「無毒性量」からはるかに低い値です。

基準値の4倍というと大変な量が検出されたと、マスコミは騒ぐでしょうが、法律違反とはいえ、安全性の観点からはほとんど問題ない数値といえます。

4.一般市民と専門家の認識の違い

 内閣府食品安全委員会が興味深い調査を行いました1)。一般市民3,600名、専門家161名に対し食品安全に関する認識を聞くためアンケートを取りました。その内容は、ガンの原因になると考える23項目を例示し、その中から大きな原因となる5項目を選んでもらい集計したものです。そのうち下図に示す9項目を抜粋してグラフにしてみました。


 
 このグラフをみると、たばこは一般市民も専門家も1位と考えている結果でしたが、食品添加物、残留農薬、放射性物質は両者で全く認識が異なることがわかりました。一般市民はこれらが怖いと思っていますが、専門家はリスクとしては小さい、それより飲酒や偏食の方がよほど怖いと思っているということです。

 この認識の違いはどこから来るか? それは情報量と日頃接している情報の質だと思います。専門家は幅広い又深い情報を基に的確に判断できる立場にいますが、一般市民は、何か問題になったときだけマスコミ等の情報を基に判断せざるを得ない立場にいるのです。そのマスコミ情報も科学的で客観的であればよいのですが、部分的な危険情報として発信するので正確とはいえません。

 以上、皆さんに残留農薬のことをもっと知って欲しくて色々な観点から述べてきました。リスクはどんなもの、どんな食品にもあります。量が多ければ危険、少なければ問題ないという原則は、食塩でも、農薬でも成り立つのです。是非、「量」の考えを頭に入れて何に注意を払うべきか考えて頂ければ幸いです。

引用
1)食品安全委員会ホームページ
http://www.fsc.go.jp/osirase/risk_questionnaire.data/risk_questionnaire_20150513.pdf


鳥羽 茂 氏(とば・しげる):東京工業大学大学院卒業後、味の素㈱入社、商品開発業務、調理食品研究所長を経て味の素冷凍食品㈱で品質保証業務に従事、同社定年後約7年冷凍野菜専業の大手企業、ライフフーズ㈱で品質保証業務に従事。神奈川県食の安全・安心審議会委員(現)

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