冷凍むきエビの表面に氷の膜が付いて売られているのはなぜ?
『冷凍食品についての素朴な疑問シリーズ』
Q. 冷凍のむきエビなどの魚介類の表面に、氷の膜が付いて売られていますがどうして付いているのですか?
A. 鮮度や美味しさを守るための氷です
冷凍食品の品種、メニューの多さには今更ながら大変感心していますが、調理冷凍食品以外にも素材系として野菜冷凍食品と並んで水産系の冷凍食品も販売されています。パスタ、カレーなどのメニューに重宝されるむきエビ、シーフードミックスなどです。
N社の冷凍食品「シーフードミックス」
又、鮮魚売り場の隣で、温度-5℃の棚に置かれた調理素材用の魚介類もよく目にします。これらの商品は、工場からの流通は-18℃以下で管理され販売時にシールを貼って-5℃で販売されている場合も多くみられます。これらは分類上、冷凍食品ではなく惣菜半製品に当たります。
さて、これらの商品をよくみると、表面に薄い氷の膜が付いています。これは、魚介類を-30℃以下で急速凍結した直後に、氷水中を短時間くぐらせて、あるいはスプレーによってその表面に薄い氷の膜を付けているのですが、これをグレーズ(氷衣)といいます。グレーズの量は、魚介類と水の温度、表面の状態、処理時間によって異なりますが、一般的には10%前後です。
グレーズ処理は保存中の製品の品質保持にとって有効な手段です。冷凍保存中であっても徐々に氷が蒸発(昇華)して乾燥しますが、グレーズを付けることによって乾燥を防止し、更に空気中の酸素に直接触れないため脂質の酸化を防ぐことができます。グレーズは冷凍品の鮮度やおいしさを保つ大切な氷なのです1)。
グレーズされた製品を解凍すると氷が融けて水になるので、その分だけ重量が減少します。損したと思うのは早合点で、内容量表示はグレーズを除いた正味内容量を表示することが計量法で決められています2)。
むきエビのグレーズ
(写真は(一社)日本冷凍食品協会のホームページより引用)
グレーズされたこれら水産系の商品を調理するときは、前もってグレーズを取った方が無難です。冷凍食品メーカーの方法を引用します。
Ni社:凍ったままの本品をまわりの氷が解ける程度に流水で解凍し、水気をよく切って下さい。
No社(お急ぎのとき):流水解凍してください。グレーズが無くなってから30秒~1分後に引き上げ、水を良く切ってからご使用ください。
いずれも、解凍しすぎると魚介類の味・風味を損なうことがありますので注意しましょう。電子レンジの解凍モードなど、急激な解凍は避けた方が良いです。もし、グレーズを取らずにそのまま使用する場合には、氷が10%前後入っていることを考慮して調理時間、あるいは調味料の量を決める必要があります。
グレーズ処理は、魚介類だけではなく野菜冷凍食品についてもよく行われます。対象は幅広く、バラ凍結製品では里芋、ブロッコリー等、ブロック凍結製品では、ほうれん草、小松菜等があげられます。
目的は、魚介類と同様ですが、主に乾燥防止です。調理時は、グレーズしてある野菜冷凍食品においても、解凍せずそのまま調理して問題ありません。
下の写真は、バラ凍結したブロッコリーにスプレーでグレーズ処理しているところです。
引用文献
1)鈴木徹:新版・第6版冷凍空調便覧、p71、日本冷凍空調学会(2013)
2)経済産業省ホームページ
鳥羽 茂 氏(とば・しげる):東京工業大学大学院卒業後、味の素㈱入社、商品開発業務、調理食品研究所長を経て味の素冷凍食品㈱で品質保証業務に従事、同社定年後約7年冷凍野菜専業の大手企業、ライフフーズ㈱で品質保証業務に従事。神奈川県食の安全・安心審議会委員(現)