安心・安全Q&A

Q フリーザーの中で冷凍食品の袋がパンパンに膨らんでいるのですが、中身は大丈夫なんですか?

『冷凍食品についての素朴な疑問』いろいろあると思います。今回は、よく聞くお問い合わせからひとつ。

フリーザーの中で冷凍食品の袋がパンパンに膨らんでいるのですが、中身は大丈夫なんですか?

結論から言えば、買ってからきちんと冷凍庫で保管していたものなら捨てないで下さい。膨らんでいる原因のほとんどは、体積が増えた空気です。

以下、専門的な立場から解説して「答える人」は、冷凍食品の品質保証エキスパート鳥羽 茂 氏です。冷凍食品を愛用されているみなさまの安心につながるよう願っております

冷凍食品をスーパーで購入したときは何ともなかったのに、家庭の冷凍庫にしばらく保存しておいて出したときに、稀に袋がパンパンに膨らんでいて、え、どうして!と思うことありますか。特にこれから暖かくなる5月から10月にかけてこの膨張に関するクレームや問い合わせが多くなりますので疑問にお答えします。

Q1.袋がパンパンに膨らんでいますが、食べても大丈夫ですか?

ご家庭で充分な温度管理をされていれば、通常通り召し上がって頂いて何も問題ありません。袋の中の気体を分析してもほとんど空気と水蒸気です。腐敗したときに発生する二酸化炭素、メタン、アンモニアなどは検出されません。ただし、常温に長時間置かれて膨らんでいる場合には、解凍して腐敗しガスが発生している可能性もあるので、この場合には召しあがらないようにして下さい。

Q2.なぜ、膨らむのですか。?

膨張の原因については、色々な要素が合わさっているので複雑です。

(1)昇華
冷凍庫の開閉などで庫内温度が変化すると、冷凍食品の表面に付着していた細かい氷が蒸発(昇華=氷から水にならず直接、気体になる現象を昇華といいます)し、袋の中の空気の体積が増加することで膨らみます。

ここから話が難しくなりますが、気楽に読んで下さい。

冷凍食品各社のお客様に対するQ&Aを見ると、ほとんどこの昇華現象を原因にして説明しています。間違いではないのですが、昇華による氷の蒸気圧は、大気圧が1013hPa(ヘクトパスカル)に対して、-18℃ではわずか約1.2hPaしかありません。袋をパンパンにするほどの圧力はなくほとんどは空気と考えられます。では、この空気はどこから入ってくるのでしょうか。それが次の袋のピンホールです。

(2)袋のピンホール
冷凍庫の扉を開け、外の外気と庫内の冷気が入れ替わってから扉を閉めると、20℃の空気が-18℃に冷やされ瞬間的には庫内の圧力は最大13%下がります。すると、中にある袋は密封されているので膨らみます(高い山に登った時、あるいは飛行機の中で、お菓子の袋が膨らむのと同じです)。その後、庫内の圧力は徐々に元の大気圧に戻るのですが、この時に袋に微小なピンホールがあると、ピンホールを通して袋の中に空気が入りこみます。こうして扉の開閉を何回も繰り返すことにより袋がだんだんと膨張していきます。

ここで、また複雑なのですが、ピンホールの大きさによって現象が異なります。

① 0~10μm:空気の出入りはほとんど無しので膨張しない。
② 10~20μm:空気の出入りあり。袋に入るのが優勢で膨張に至る。
③ 20μm以上 :空気の出入りが自由で膨張しない。
(μmは1ミリメートルの千分の一、また10、20μmはおおよその推定値です)

すなわち、全くピンホールがなければ膨張は起こりません。また、大きな穴が開いていれば、袋の外とツーツーなので膨張しません。その間の微妙な大きさのピンホールがあるとこの膨張現象が起こるのです。

(3)ピンホールの原因
では、このピンホールはなぜ起こるのでしょうか。流通中に物理的な衝撃で開く場合もありますが、袋のシール不良によるところが大です。

冷凍食品の包装形態は様々ですが、工場で包装時に袋を作って同時に充填する方法が多くあります。縦ピロー包装、横ピロー包装と呼ばれるものです。その場で1枚のフィルムから袋を作るので、折り返した部分をヒートシール(熱接着)する必要があり、2重~4重に重なった面をヒートシールします。すると、まれにシール面が完全には接着できない部分が発生しそこにピンホールができます。目視ではわからない微小な穴です。これはいつも必ず起こるわけではなく予測はできません。従って、膨張現象も起こる袋と起こらない袋が出て来るわけです。

これを防ぐために、冷凍食品各社はヒートシールに工夫を凝らし、シール面を幅広にする、シール線を複数設ける、ゴザ状のシールで密封性を向上させる、その他の対策を講じていますので、現在は袋の膨張クレームは減少しつつあると思います。

参考文献)小口幸成:冷凍、76(5)、434(2001)


鳥羽 茂 氏(とば・しげる):東京工業大学大学院卒業後、味の素㈱入社、商品開発業務、調理食品研究所長を経て味の素冷凍食品㈱で品質保証業務に従事、同社定年後約7年冷凍野菜専業の大手企業、ライフフーズ㈱で品質保証業務に従事。神奈川県食の安全・安心審議会委員(現)

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