加工食品は、どんな原料を使って、どのように生産しているの?
『冷凍食品についての素朴な疑問シリーズ』
Q. 加工食品は、どんな原料を使って、どのように生産しているか、わからないから心配です。
A. 日本の消費者は、世界で最も食品の安全性に気を配る国民と思います。そのことが、言い換えれば消費者のチェック機能が、日本の食品の安全を高めてきた大きな原動力になっていることは否定できません。私たちが日々安全な、おいしい食品を、安心して食べることに繋がっていると思います。同時に、そうしたチェック機能のベースになるのは正しい知識とマスコミやSNSに踊らされない冷静な判断力と言えます。
消費者の皆さんに対する、食に関するアンケート結果は時々公開されていますが、例えば、神奈川県は毎年「食の安全・安心に関するアンケート」を実施しています(※1)。少し抜粋して紹介しますと、現在流通している食品について、
安全だと思う・どちらかといえば安全だと思う :62.0%
どちらともいえない :18.7%
安全だと思わない・どちらかといえば安全だと思わない:18.0%
という結果で、2割弱の皆さんが不安を感じているようです。安全だと思わない理由としては、食品添加物、輸入食品、残留農薬などが挙げられていますが、これは食品関連事業者が信頼できない、情報の提供が不十分である、ということが根底にあるのかも知れません。
そこで、現在流通している食品の工場生産において、工場でどのように原料を受入れ、生産段階でどのようにチェックされ出荷されているか説明して、少しでも消費者の皆さんに正しい知識を持ってもらいたいと思っています。
下の図は生産者から消費者までの食品の流れを示したフードチェーンです(※2)。①は通常の冷凍食品も含めた加工食品のフードチェーンですが、一方、原料である農畜水産物を購入して家庭内調理する流れが②です。②の中には、加工食品の原料の品質をあまり信用していないので手作りする、①の中には、手作りしている時間がなく、しょうがないから加工食品を使うという消費者も少なからずいらっしゃると思います。
家庭で素材から調理する場合、皆さんスーパーなどの販売店で、できるだけ新鮮で良い品質のものを選んで購入されていると思います。加工食品工場も基本同様です。工場では、調理加工だけでなく、素材の良しあしの目利きも皆さんに代わって行っているのです。異なるポイントは、その選定のルールが非常に事細かく定められている、ということです。
では、フードチェーン①の中の食品事業者が日々行っている原料の管理について説明致します。
図-①をご覧下さい。
工場はただ安価な原料をその辺から購入しているわけではありません。まず、原料メーカーを選定するため、現地に行って(もちろん海外にも)厳しいチェックを行います(査察と言います)。その結果購入先として相応しいと判断したら、購入する原料の規格を決め双方合意の上文書を交わします。そして、前もって少量の原料を確認し(先行サンプルと言います)、規格通りを確認した後、実際の原料を購入します。
実際に工場に搬入された原料はロット毎に検査され、合格した原料のみを生産に使用します。品質管理部門の管理下で、これを日々行っていますが、規格に合致しない原料が搬入された場合は、返品と同時にクレームとして原料メーカーに連絡し改善を要請します。
定期的に、原料メーカーを訪問し、管理状態を確認するなどコミュニケーションを図ります。
原料の受け入れ検査は、下の表-①の通り行い、記録を取ります。ここで、野菜等の生鮮原料では鮮度、異物、虫が混入してないこと等をポイントにチェックを行います。
生産ラインに入った原料を連続的にチェックすることは最終製品にとって非常に重要なことですが、参考までに異物検査及び異物があった場合の選別除去の方法を表-②に列挙します。異物混入は、製品を買って頂いた消費者の皆さんにとって最も期待を裏切ることになってしまいます。そういうことが無いよう、工場では、このような異物選別方法を導入しながら細心の注意を払い異物の無い製品を日々生産しています。
以上のように、ここでは原料を中心にその管理状況を説明しましたが、加工食品に加工するから原料は多少品質が劣ってもよいとか、鮮度が悪くともよいとか、そのような管理の仕方は全くやっていないことを理解して頂きたいと思います。その中でも、冷凍食品は、原料の品質が最終製品の品質に大きく影響することを、食品事業者はよく認識しています。厳しいチェックに合格した原料のみを使用して、冷凍食品工場では日々おいしい品質の製品を生産する努力が続けられていることを、消費者の皆さんは頭に入れて頂いて、冷凍食品を堂々と使って、味わってほしいと思います。
参考文献
(※1) 神奈川県ホームページ
(※2) 農水省ホームページ
鳥羽 茂 氏(とば・しげる):東京工業大学大学院卒業後、味の素㈱入社、商品開発業務、調理食品研究所長を経て味の素冷凍食品㈱で品質保証業務に従事、同社定年後約7年冷凍野菜専業の大手企業、ライフフーズ㈱で品質保証業務に従事。神奈川県食の安全・安心審議会委員(現)