Q 最近の中国食品の安全性は大丈夫ですか?

長く続いた野菜の高値!スーパーの店頭で悩みましたねー。野菜不足、高騰を背景に海外からの輸入食品も急伸したようです。さて、そんな環境の中で、週刊誌の「中国危険」情報に少々驚きました。

そこで、鳥羽茂氏に質問する『冷凍食品についての素朴な疑問シリーズ』です。

Q 最近の中国食品の安全性は大丈夫ですか?

A. リスクを客観的に把握しましょう。

4月~5月に4週に渡って週刊文春が「危ない中国食品2018」の特集を組みました。以前から掲載していた内容とあまり変わらず、「危険情報」に注意を払う傾向のある私たちに訴えたメディア戦略です。「安全情報」には私たちはあまり関心を持ちませんが同じように注意を払いたいものです。一方、5月には週刊新潮が「食べてはいけない国産食品」を掲載しました。食品添加物等の悪者説を基に記事にしたものです。

こうした記事を鵜呑みにすると、世の中「危ない食品」ばかりでいったい何を食べたら良いの?という疑問が生じるでしょうが、私たちはもっと冷静に客観的に事実を見ていくべきと思います。そのためには最近よく使われるようになった「リスク」というものを頭に入れる必要があります。リスクとは、ある行動に伴って危険に遭う可能性を言います。リスクは、

リスク=(危害)×(発生頻度、量、程度)

の掛け算で表わされ、危害がそれ程大きくなくとも頻度が高ければリスクは大きく、危害が大きくともほとんど起こり得ないのであればリスクは小さいことになります。福島原発事故は、事故が起こったら危害は大きいことはわかっていましたが、発生頻度は日本ではゼロと見做していたためリスクはゼロと専門家も楽観視していたと思われます。

食品の場合もリスクゼロはありません。どのような食品もリスクはあるので、その可能性がどの程度かを私たちは知る必要があります。1つの例として、基準値を超えると法律違反として問題視される残留農薬ですが、基準値を決めるときに安全率を100倍にしてあるので、基準値を数倍超えても人に対する危害はほとんどありません。さらに、発生頻度も実際は低いので、両者の掛け算であるリスクは非常に小さいと言えます。

別の例として、鶏肉を不十分な加熱で食した場合、残存する食中毒菌(カンピロバクター)による危害が想定され、その危害は腸炎による下痢や腹痛ですが、その頻度は高く国内で年間約2000人の患者が報告されています。すなわち、加熱不十分の鶏肉リスクは非常に大きいと言えます。

残留農薬と加熱不十分の鶏肉を比較するのは少々乱暴かも知れませんが、前者の方が怖いと思っている方々も多くいらっしゃると思います。しかし、実際のリスクは逆になりますので、こうした安全性はリスクを客観的に捉えることで正しい判断ができるということを覚えておきたいと思います。

さて、タイトルにある中国食品の安全性ですが、以前説明させて頂いたように、中国から食品を輸入する場合、多くのハードルを設けて安全性を確保する努力がされています。輸出国である中国企業、及び中国政府の検査、輸入国の日本政府の水際検査、さらに日本の各企業が現地と協力し、農場・工場の農薬・衛生管理により生産段階から安全性を確保することが行われています。その結果、中国から輸入される食品の違反率は他の国と比較して決して高くないことを説明しました。そのときのデータは厚生労働省の平成26年度輸入食品監視統計から引用しましたが、データが古くなったので、現段階で公表されている最新の平成28年度のデータを基に再度確認してみました。届出件数が5万件以上の輸入相手国8ケ国を抜き出し、検査件数、違反件数、及び違反率(検査件数に対する違反件数)を表にしてみました。

この表を見ると、中国の届出件数がダントツで輸入量が最も多いので、検査件数も違反件数もトップであることがわかります。中国の違反数は202件から181件に10%減少しました。以下、アメリカ、フランス、タイと続きますが、違反率を見ると中国が8ケ国の中で2番目に低く、フランスや韓国と同レベルです。アメリカやイタリア、タイなどと比較するとかなり低いことがわかります。全体の傾向は平成26年度と同様であり、中国は引き続き違反対策に取り組んでいることが理解できると思います。

筆者自身も、以前、中国食品の安全性確保を目的に、山東省・福建省・江蘇省・湖北省・安徽省・広東省・四川省などに40回近く足を運び中国企業の指導をしてきましたが、日本向け食品を生産している工場では、衛生管理、残留農薬管理を中心に日本企業の指示のもと、継続的に改善が進められております。もちろん、中国もレベルは上がってきているとは言え、改善すべき点はまだまだあると考えますので、私たちもリスクの考え方をもって客観的に冷凍食品の安全性に向き合うことが求められます。


鳥羽 茂 氏(とば・しげる):東京工業大学大学院卒業後、味の素㈱入社、商品開発業務、調理食品研究所長を経て味の素冷凍食品㈱で品質保証業務に従事、同社定年後約7年冷凍野菜専業の大手企業、ライフフーズ㈱で品質保証業務に従事。神奈川県食の安全・安心審議会委員(現)

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