「安全なのに、安心されない」状況を打ち破る
「冷凍食品認定工場基準」が2017年4月から改定される。日本冷凍食品協会は4月12日の東京会場を皮切りに各地で改定説明会を開催し、周知徹底を図っている。今回の改定ポイントは、基準の大枠が①仕事の仕組み②ソフト③ハードと3つに整理されたこと。1970年にハードの基準主体に制定された業界の基準は、2009年にソフトとハードの2面で成り立つものに進化し、2017年、さらにレベルアップする。協会では今後10年を見据えた改定としている。しかし、日本は先進諸外国に比較してHACCPの浸透が遅れているという現状を見るに、早急な対応が各工場でなされるべきであろう。
新設の「仕事の仕組みに係る基準」では、まずコンプライアンス、環境配慮などをはじめとする企業の社会的責任を明記、食品防御(フードディフェンス)を加え、また、危機管理、表示、さらに、波紋を広げた廃棄処理受託業者の不正横流し事件を視野にアウトソースに関する管理なども整理している。
HACCP導入に伴って、製品ロット検査から、新たに「工程管理のための検査」に移行する。具体的なHACCP管理は、生産ラインそれぞれによって異なるいわば自己責任のオーダーメイドとなろう。HACCPは義務化される方向にあり、協会の説明会では、東京オリンピックのオフィシャルな食事提供の場では、HACCP管理されたものしか使用しない、という厚労省方針の話も出た。現在約400工場という冷食協認定工場が1つの脱落もなく基準をクリアするように願う。
さて、業界新基準の徹底とからみ、先の説明会では、このほどまとまった「冷凍食品の利用状況実態調査」結果の一端が紹介された。同結果によると、8割弱の人が月1回以上、週平均1.9回冷凍食品を利用し、これは微増傾向である半面、2割強の人が「利用しない」分類に入る。そして、利用しない理由には、「お弁当を作らなくなったから」、「手作り志向」を筆頭に、「中国産が多い」「割高」「原材料産地に不安」「添加物を使っていそう」「保存料を使っていそう」などが続く。
業界基準をより厳しく、徹底する一方で、上記の不安が払拭される手を打たなければ、それこそ10年先の展望はないだろう。安全だけに傾注しても安心は得られない。安全が安心を産む、裏付けとなるという考え方もあろうが、業界は経験的に、こと事件が起こったときにその論理は働かないと感じているのではないか。安全の徹底と安心の醸成は車の両輪のように回していかなければならない。