Column

2017年正月 専門店上陸が示唆する家庭用冷凍食品の近未来を考えよう


 2017年元旦の東京は快晴。晴れやかな年の初めを感じつつ冷凍食品の今後をあれこれ考えてみた。
 昨年、フランスの冷凍食品専門店「Picard(ピカール)」が本格上陸した。炒飯の人気を引き金に冷凍食品の一般メディア露出が増え、「夕食向け」商品にも関心が高まってきた。女性の活躍推進をめぐっては、環境整備が重要と多方面で変化の兆しが見られた。当然家事、育児の課題が浮かび上がる中で、食にかかわる「時短」は、ますますの関心事となってきた。昨年は紛れもなく冷凍食品が注目された1年であった。
 日本冷凍食品協会が年末に発表した同年の国内生産量予測は、153~155万tで前年比1~2%増見通し。家庭用は米飯類が全体を牽引したが、業務用は前年並だろうとした。2年連続マイナスからの脱却予想である。155万tは、過去最高であった2013年の実績である。
 この前年からの勢い、世間の注目に応えて、業界は今年も冷凍食品の余りある魅力を具体的な商品で伝えていかなくてはならない。

 ピカールの話題が出ると、誰もが店に行ってみたい、買ってみたい、食べてみたいと言う。なぜ大注目を集めているのか。Instagramへの投稿を宣伝に活用するなど、行った、買った、作った、食べた云々の先取り情報がSNSでもてはやされることを利用したPRの成功がまず挙げられる。さらに、「フランス」「冷凍食品専門店」という響きの良さもあろう。冷凍食品業界にとっては、消えない頭痛の種である安売りをしている量販店グループがチャレンジするという話題性もあるが、年末会見・懇談会等で業界トップに聞くと、日本での開発に携わるか否かを抜きにして、概ね歓迎の意であった。「冷凍食品」という言葉が頻繁に出るだけでも良い効果が期待できる。また、冷凍食品が価値の高い食事を提供できる食品だと認知される効果も歓迎している。
 「味のうすい調理品」という言葉も聞いたが、これについては、「日本の冷凍食品がレディ・トゥ・イートであるのに対して、ピカールはレディ・トゥ・クックだから」と簡潔に分析した方がいた。確かに、ピカールの商品は、例えオーブン加熱だけであってもメニューを調理する最後の段階を残した商品が多く、仕上げが消費者に託されている。日本の冷凍食品では、業務用商品に通じるところがある。もちろん、日本の業務用商品の方が繊細かつ使い勝手よく仕上がっている。

 今さら「フリーザーセンター」という言葉を使うと笑われるかもしれない。1970年代に台頭した冷凍食品専門店業態、フランスのピカール、イギリスのビイジャム(現アイスランド)はそう呼ばれていた。1980年代以降日本でそれに倣ったチャレンジがあり、失敗事例も多々あったのだが、いくつかの業務用食品スーパー(ホールセールストア業態)として現在につながっている。
 ピカールの上陸は、いよいよ時代が到来したという喜びをもって業界は受け止めるべきではないだろうか。家庭用は安売りばかりで儲からないという呪縛から脱出しよう。専門店業態が発展することで価値のある商品提案、価値に見合った価格での提供が現実のものになる。
 
 さて、50数年前に冷凍食品業界のエポックとなった東京オリンピックが3年後に迫る。
 2020年東京オリンピックに向けて、選手村、ホテル・レストラン等でさらに進化した冷凍食品が活躍することは必至だが、家庭用冷凍食品にも備えておかなくてはならないことがある。首都圏限定ではあるが、オリンピック会期中の家庭内食だ。
 印象に残るのは、北京五輪会期中の強制的車両締め出しによる奇跡のような青空。それほど極端ではないが、ロンドン五輪の際は多くの企業が社員の自宅勤務体制に工夫をこらしたと聞く。首都開催の五輪一大イベントは、人、車の移動を制限する。事業の停滞を招かないよう万全の準備が求められる。そして、巣篭もり状態になるであろう首都圏市民の「食」をどう担うか。冷凍食品こそその問題解決に最適の食品と考える。今よりもっと食卓で価値を演出できる商品の開発を進めておかなくてはいけない。
 レディ・トゥ・イートの商品と、レディ・トゥ・クックの商品をどのように考え提案していくか、今年はそれを開発の課題に加えてほしい。

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