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アフターコロナはビフォーコロナに戻さず効率化して改革~三菱食品の決意に見る食品流通の新未来像

三菱食品の2019年度(2020年3月期)決算説明会は、5月11日、会議システムによるリモート開催だった。ゴールデンウイークが明けても緊急事態宣言が続く中で大きな注目を集めた食品中間流通トップ企業による発表会。森山透社長による「新型コロナウイルス感染症への対応状況」説明から始まり、「アフターコロナはビフォーコロナには戻さず、効率化して卸事業を改革する」という表明が強く印象に残るものだった。
日本の食を支える仕事は、もっと効率的にできる。AI需要予測が卸売業の社内効率を高め、棚割からデータ分析、販促提案に至るまでをデジタル化することによるメリットを得意先・取引先に提供し、さらに業界同業と連携してムダを省き効率化していく。同社は4月から専門担当を配し、本格的な構造改革に着手した。
今後、業務用需要の大きなマイナスが解消されるのは第3四半期以降という予測を示していたが、そのアフターコロナのスタートが実り多きものになるよう祈りたい。

三菱食品㈱2019年度決算説明会配布資料

折につけ、日本の食品流通が多元的で複雑であることの弊害が言われてきた。また、小売大手のバイイングパワーも良し悪しが問われてきた。しかし、今回ほど明確に「改革」方針を示した事例はかつてなかったのではないか。社会を揺るがず感染症拡大により人が動けず、結果、高度なリテールサポート体制と言ってきたものは、実はオーバースペックであった部分が顕著になった。「シンプルな形に見直す」(同社長)改革へ向かう契機を得たのである。
冷凍食品業界も「シンプル」とは言い難い業界、売れてももうからない食品と言われてきた。小売店がハイ&ローの販売からEDLPへ移行してからは、大きな波風は立っていないと推察するが、かつては他の食品から異動してきた人々から、取引の複雑さに疑問が投げかけられた。しかし、ことを明らかにすれば簡単に販路が断たれ、苦汁をなめたという事例も聞いた。複雑なものがシンプルになることは大歓迎である。

さて、中間流通はどのような改革を実行できるのか。会見では事例として”対価を伴わない作業”が示された。なんとも悲しい、利益率を下げる過剰なサービスがこの機に見えたということだ。また、新商品数が多いことも場合によっては売場での過剰が引き起こされ、ロスを生んでいると指摘された。もちろん、極端な表現だとは思うが、それほど、生活者の心に響く売場での商品提案、需要創造は難しいということだ。そこを論理的に的確に行うのがデジタル武装による変革なのであろう。シンプルに、必要とされるものを生活者の手が届くさまざまなチャネルに効率よく配置すること。買える場所がますます多様になってきている今こそ、新しい発想で、食品の新しい流れを実現してほしい。

冷凍食品について加えて言えば、この2カ月余りで家庭に必要とされる食品、頼りになる食品であることが明確になって、新たな需要層も獲得した。保存料不要でロスの無い優れた食品であるという認知も広がった。アフターコロナの時を迎えても、この信頼は揺らぐことはないだろう。未だ需給バランスが良くない状況は続いているが、製・配・販の連携によってこの難局を乗り越え、未来に向けて更に大きな夢を描ける業界へと歩を進めてほしい。

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