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コールドチェーン100年へ課題共有を

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↑ 技術士、杉本昌明氏の講演資料より。写真㊨の戸畑冷蔵で、日本で初めての市販用冷凍食品、「イチゴシャーベー」が生産された(昭和7年)→本サイト「冷凍食品の歴史」参照

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↑ 12月2日開催の「コールドチェーン勧告50周年記念講演会」への出席は35名。もっと業界の関心を呼んで良い企画であったが、残念。

1964年東京オリンピックに続き、翌1965年も冷凍食品産業にとってのエポック年として語られる。1964年はオリンピック女子選手村の食堂を任された帝国ホテルの村上信夫シェフが、ニチレイ(当時日本冷蔵)と共に冷凍食品を研究し、その活用によってバラエティに富んだメニューを提供し大好評を受けた。以降、業務用の調理現場の冷凍食品に対する関心が高まったとされる。1965年は科学技術庁「コールドチェーン勧告」が出た年である。その50周年を記念した講演会が今月2日に開催された。
講演会では、さまざまな切り口から専門家が語り、最後は東京海洋大学の鈴木徹教授を座長にパネルディスカッションもあり、50年を振り返り、50年後を展望した課題を共有する会になった。
しかしながら、参加者は35名。報道も機器関係1社と本サイトのみ。十分な告知期間があったのだがと主催者の声を聞くに、業界にはコールドチェーンはすでに整備されているという認識があって、関心を呼ばなかったのではないかと推測する。確かに機器も車両も高度に進化を続けているが、当日の講演会で見えてきたのは、それを適切に動かすノウハウには多くの課題がある、ということだった。納品のための待機車両の問題、築地市場での非効率的な納品システムと豊洲新市場でも課題を引きずりそうだという予測などはその一例で、驚きをもって聞いた。また、持続可能で、かつ消費者の利益を増すためのコールドチェーン研究が注目されているヨーロッパの事例も紹介され、日本でも同様の盛り上がりを作れないものかと考えさせられる会となった。
パネラーが掲げた課題は幾つかあるが、中でもわが国がよく考えなくはいけない食品ロスについて注目したい。現在冷凍食品の賞味期限は1年というのが通例であるが、諸外国では2年がBEST BEFOREという例が多い。新TTT研究(温度、時間を要素とする保存期間の研究)に基づき食品ロスを少なくすることに貢献すべき、という杉本昌明氏からの提言に賛同したい。50年前とは機器も商品自体も格段の差異があるだろう。また、最終段階の「解凍」に重きを置いた研究や消費段階での認知アップが必要という意見、地域の産業活性に冷凍技術が貢献すべきというテーマも、日本の農水産業が耳を傾けるべきものだろう。
今年、50年を振り返った業界人は、50年前の先達に感謝し、そして50年後の業界、社会に思いを馳せ、今できる手を打つことが使命、なのではないだろうか。

【参考】
コールドチェーン勧告50周年記念講演会プログラム

第一部 10:00-11:50
1.1
開会の辞
菱沼義久(農林水産省)
10:00-10:10
1.2
コールドチェーン勧告の概要
渡辺 学(東京海洋大学)
10:10-10:30
1.3
コールドチェーンを構成するインフラの変遷
始関修一(前川総合研究所)
10:30-11:10
1.4
ロジスティクスからみたコールドチェーンの役割と課題
苦瀬博仁(流通経済大学)
11:10-11:50

第二部 13:00-14:45
2.1
コールドチェーンの発展が水産物の品質に与えた影響
杉本昌明(杉本技術士事務所)
13:00-13:35
2.2
コールドチェーンが青果物の流通と品質に与えた影響
椎名武夫(千葉大学)
13:35-14:10
2.3
コールドチェーンの発展が調理冷凍食品に与えた影響
尾辻昭秀(日本冷凍食品協会)
14:10-14:45

第三部 15:00-16:50
3.1
コールドチェーンが日本人の栄養と健康に与えた影響
的場輝佳(奈良女子大学)
15:00-15:35
3.2
EUを中心とする世界のコールドチェーン研究の動向
渡辺 学(東京海洋大学)
15:35-16:10
3.3
パネルディスカッションと総括
鈴木 徹(東京海洋大学)

 

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