『冷凍食品についての素朴な疑問シリーズ』 最近、中国食品の話題を聞きませんが品質は大丈夫ですか?
違反率も低く推移していて心配いりません。
以前からこのコーナーでは、日本向け食品を生産している中国の工場において、日本人駐在員や日本企業の指導のもと、衛生管理、残留農薬管理など継続的に改善が進められ中国食品の安全性が向上してきたことを説明してきました。今回は、現地での管理方法の簡単な説明と、継続的に紹介している厚生労働省の輸入食品監視統計から、輸入食品の違反率の最新情報の説明をしたいと思います。
まず、冷凍食品工場での管理方法を、イラストを入れながら簡単に説明しましょう。
以下の資料は、中国の食品工場で働く従業員向けの教育用スライドから一部を目次的に抜粋したものです。
1.「食品安全、品質はなぜ大切か」を学ぶ
2.「工場に入る前の心得」
ⅰ)個人的な健康と衛生管理をしましょう。
ⅱ)私物の持ち込みはしないようにしましょう。
ⅲ)作業服は正しく着用しましょう。
<作業服の正しい着方>
ⅳ)髪の毛やほこりなどを落として作業場に入りましょう。
ⅴ)手洗いをして作業場に入りましょう。
ⅵ)作業用の靴は清潔にしておきましょう。
<靴底洗浄ローラー>
3.「作業前の心得」
4.「作業中の安全心得」
5.「作業中の衛生心得」
6.「作業後の心得」
7.「整理・整頓・清掃・清潔・習慣づけ」
8.「主な食中毒菌と異物混入の基礎知識」を学ぶ
以上簡単な説明でしたが、生産される食品の安全性と品質は、製造中の衛生管理と従業員の衛生、安全意識にかかっていますので、学んだことを実践して、より安全で品質の高い製品を作り出すように従業員一同で協力して取り組んでいることを述べたものです。
次に、輸入食品の違反率の最新情報をみてみましょう。下図は、令和元年度の輸入食品監視統計から、届出件数が5万件以上の輸入相手国8ケ国(中国、アメリカ、フランス、 タイ、韓国、イタリア、ベトナム、オーストラリア)を取り上げ、検査件数、違反件数、違反率(検査件数に対する違反件数)とその順位を表にしたものです。
中国の違反率は0.231%で8ケ国の中で3番目に少ない順位ですが、前年(平成30年度は0.230%で1番少なかった)と比べてほとんど変化はありません。フランス、韓国の違反率が下がったために3番目になりましたが低い違反率は維持されています。そのことを表すために中国の違反数の年度による変化をグラフにしてみました。合わせて、各国の違反率も年度による変化をグラフに示します(太赤線が中国)。
これらのグラフからわかるように、近年の中国は違反数、違反率とも低位で安定しており、製造工場の管理状態は輸入先の諸外国のなかでも問題ない状態を維持していることがわかります。近年の、冷凍食品を含めた中国食品の安全性については心配ないレベルになっていると考えています。
鳥羽 茂 氏(とば・しげる):東京工業大学大学院卒業後、味の素㈱入社、商品開発業務、調理食品研究所長を経て味の素冷凍食品㈱で品質保証業務に従事、同社定年後約7年冷凍野菜専業の大手企業、ライフフーズ㈱で品質保証業務に従事。神奈川県食の安全・安心審議会委員(現)