冷凍魚介の高品質保持は-40℃以下、冷凍寿司解凍テクニックに道筋~FF Tech 初のリアル会合に約100人
大間産マグロのヅケにぎり。実は、冷凍寿司をレンジで解凍したものです。シャリは人肌、ネタはひんやりと食べ頃に仕上がっています。
ヅケマグロの冷凍寿司を作った、麻布鮨心の店主、中村導昌氏です。「鮨心の冷凍寿司開発秘話」と題して講演しているスナップです。
会場は東京海洋大学「楽水会館」。11月27日に一般社団法人食品冷凍技術推進機構(略称:FF Tech、鈴木徹代表理事:東京海洋大学特任教授)主催の「第36回食品冷凍技術懇談会」が初のリアル会合として開かれ、約100人が参集し、水産物の高品質保持技術について(東京海洋大学・岡﨑恵美子客員教授)学び、鈴木代表理事が長年研究を続けてきた冷凍握り寿司の電子レンジ解凍方法とその理論について講演、続いて同解凍方法によって解凍した鮨心の冷凍寿司の試食を交えた中村氏の特別講演が行われました。
ネタは冷たくシャリが人肌状態を説明する鈴木代表理事です。高出力レンジの短時間解凍で実現しますが、一度に1カンもしくは数カンの解凍どまりという課題もあります。
一方、鮨心で作り通販で販売している冷凍寿司の解凍方法は、約40分を要する湯せん。中村氏は講演の中で、「冷凍のお寿司を流通させることは、寿司への恩返し、世の中を明るくして地方の産地も元気になると考えました。利益にはならない、信念のみで3年やってきましたが、鈴木先生がご紹介された短時間の解凍方法をうかがい、確信に変わりました。私1人ではECサイトでの販売のみ。ぜひ皆さまのご協力を頂きたい」と話しました。会場からの質問も相次ぎ、酢飯の凍結、解凍に取組んできた中村氏からその工夫の一端も披露されました。
基調講演を行った岡﨑先生は、マグロをはじめ冷凍鮮度保持の各種事例、実験結果を示しながら、魚介類の冷凍保管で劣化を防ぐには「マイナス40℃以下保管」が必要条件と提言。「冷凍水産物の美味しさを保持するためには、原料である魚介類の鮮度が重要。そして適切な冷凍貯蔵条件など各種の要因に配慮する必要があります」とまとめました。つまり凍結するだけのことに目を向けるのではなく、保管法、解凍法も相まって美味しいものが食べられる、ということです。
当日は、FF Techが3月に発足して以来初のリアル会合となり、同顧問、学術会員も多数出席して、会合後の情報交換交流会も含めて食品冷凍技術を軸にしたネットワーク醸成の1日となりました。
鈴木代表理事は、「新機構は食品冷凍技術に特化して、創り出す、クリエイティブな事業を推進しようと立ち上げました。今回取り上げた水産物の品質保持、冷凍寿司のテーマもまさにクリエイティブなもののひとつ」と開会挨拶の中で改めてFF Techの設立目的を説明しました。
来賓を代表して、東京農業大学の高野克己名誉教授(FF Tech顧問)が立ち「冷凍食品は今や食生活に欠かせないものになり、日常のものから高級なものまで、たくさんのものがありますが、それを可能にしているのが冷凍技術です。水産物から始まりいろいろな分野で冷凍食品の技術が発展したことで我々の食生活がより向上してきました。今の鈴木戦線のご挨拶で、食品の冷凍科学技術について積極的に発信していくという思いが伝わってきました。ますます同会が発展することを祈念いたします」と挨拶しました。
★ 「第37回 食品冷凍技術懇談会」のご案内(12月)★
2023年12月20日(水)15:00-16:30(オンライン)
【テーマ:過冷却と食品冷凍】
【ゲスト:弘前大学 君塚道史氏(FF Tech学術会員)】
⇒過冷却とは、水などの液体が凝固点(凍って個体になる温度)よりも低い温度まで
液体のまま冷やされることを言います。
今回は、「水を凍らせずに、液体の状態を保ったままさらに冷やすこと」ができるという
過冷却現象のメカニズムを解説するとともに、食品分野での利活用についてディスカッションします。
※各回アーカイブ配信有り。当日視聴できなくても安心です。
申 込:https://forms.gle/yqFWLjEUcjQ2Gy8C7
参加費: 3300円(税込) ※FF Techの会員様は無料となります。
主 催: 一般社団法人食品冷凍技術推進機構(https://fftech.jp/)
運 営: 株式会社テックデザイン