1年でパイ・生地関連商品30品を提案! 天板1枚分の12枚入パイシートがヒット(リボン食品)
大阪市で創業113年、日本のマーガリンのパイオニア、そして業務用冷凍パイ生地のトップメーカー、リボン食品の筏由加子(いかだ・ゆかこ)社長にお話しをうかがいました。同社は、業務用マーガリン・パイ・生地製品事業以外にも、低糖質冷凍パンを軸に低糖質商品を開発・販売するネット販売事業「低糖工房」を展開(2009年~)、また、ニューヨークで人気の美味しいブラウニー「Fat Witch Bakery」とライセンス契約を結び(2015年~)、Fat Witch Bakery Japanとしてネット販売や直営店舗販売を展開するなど、ユニークな事業も手掛けています。
レンガ塀の前でにっこり、ではなくて社内!です。2年前、新社長就任直後に竣工した新本社社屋(大阪市淀川区)でのインタビュー。
外観も社内も、まるでおしゃれな美術館のようなリボン食品本社社屋。米国で大学卒業後、現地で働いてキャリアを積んできた国際感覚鋭い筏社長ならではのこだわりが感じられます。
せっかくなので、社内見学ツアー。
1階事務所は広く大きなスペース。
本社内には、ユーザーと共にオーダーメイドのパイ・生地製品を開発・研究できる大型キッチンと、エアシャワー通過後に工場見学がバーチャル体験できる設備を備えた「パイラボ」があります。
4部屋ある会議室は、塩、水、粉、脂と名前がついていて、それぞれ異なる広さ。4つの原材料と比率で合わせるとパイができる!という楽しいデザインです。
最上階は大きな窓で明るく、キャフェテリアスタイルの社員食堂。
和紙アーティスト、堀木エリ子氏による「リボン食品をイメージした」作品。
100年を超える伝統ある企業ですが、未来志向の四代目社長により、歴史を礎に進化し続ける意気込みに満ちた社内です。
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—社長ご就任の際うかがったのは、業務用メーカーだけど、もっと表に出て表現していきたいという抱負でした。
筏社長 「目立つ黒子」でありたいと思っています。パイの油脂原料から生地生産、製品生産まで全て可能なオンリーワン企業として存在感を前に出していきたいと思い、この数年、様々なチャレンジをしてきました。
昨年度は、「1年で30品の新商品開発」という課題を開発部門に課しました。途中涙の訴えも上がってきたのですが、やり通せると信じていましたし、達成してくれました。素晴らしい商品が出来上がってきました。
例えば、オーブンの天板1枚に並べるとちょうど使い切ることができる12枚入のパイシート(パイシート PL100角(バター)12枚入り/同リーフ(バター)12枚入)。12枚のパイシートは、豆腐1丁の容器のようなコンパクトパッケージになっていて、省スペースの保管ができます。幅広いユーザーの皆様から絶賛いただいています。
おもしろいところでは、『飲まないタピオカドリンク』と言っているのですが、タピオカを配合したもちもち食感のシュー生地のような商品「冷凍生地ぷちもち」。中にミルクティ味のクリームを詰めて食べると、まるでタピオカミルクティです。
インバウンド需要の高まりを意識してヴィーガンパイを作ることができるパイシート、動物性由来原料不使用の製品にもチャレンジして完成(パイシート PLヴィーガン 210角×3)しました。
常温商品ですが、キッシュ用ミックス粉も期待商品です。ミックス粉を水で溶くだけでできるキッシュのベース、アパレイユができます。卵、クリーム、牛乳不要です。当社のパイタルト(常温)に、ベーコンとほうれん草など好みの食材を入れて、溶いたミックス粉を入れ、オーブンで焼くだけでキッシュが完成します。私自身作ってみても、「料理上手?」と誇らしげになってしまうほど。家庭用にも販売したい商品です。
—業務用専業メーカーとしては大胆なチャレンジです。家庭用という意味では、糖質制限の必要な方に向けて商品開発を続けている「低糖工房」がスタートして10年以上。順調のようですね。
↑「低糖工房」低糖質クロワッサン
↑「低糖工房」低糖質ホワイトロール:調理例
筏社長 ニッチなマーケットに向けた事業ですが、売上の10%を占めるまでに育ってきました。最近のネット需要の盛り上がりで、好調な販売が続いています。
リボン食品「低糖工房」通販サイト
―さて、業務用マーケットでは展示会を通じた商品提案、商談が重要なビジネスチャンスですが、今年は新型コロナウイルス流行により、チャンスロスの厳しい環境です。対応策を打っていらっしゃいますか?
筏社長 大きな展示会への出展も含めて、開発商品の積極的なアピールを今年は計画していましたので残念です。しかし、この環境下になって柔軟にスピーディに方針を転換しました。営業の仕事はことごとく縮小しますので、人員を企画開発、技術開発にシフトしていきます。数カ月~半年は終息が見込めないと考えていますが、いずれ終わる。その時に一気にお客様のための提案さまざまできるような力を蓄えておこうと思いました。
—大胆な戦略ですね。
筏社長 企業の体力を築いてくれた先達経営者に感謝しています。強みとする柔軟性で難局を乗り越えていきます。今年の大きなテーマは「スピード」と掲げています。決定も実行も軌道修正もスピードをもって進めていきます。
また、今年は「リボンアカデミー」と名付けた教育カリキュラムを組み、スタートします。今年入社の新入社員6名から管理職の社員まで、必修カリキュラムを作りました。社内の学校です。学ぶ社員だけでなく教える立場の社員もいる。双方にとってよい学びの場としていきたいと考えています。
—力を蓄え、社会に役立つ供給使命を全うする。食品企業正念場の年。元気を頂きました。