Column

変化をチャンスにするために


 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定は、大筋合意を経て、初めてその内容が開示された。多国間の利害がぶつかり合う交渉にあたって、情報漏えいは国益を損なうので厳禁、との理由から、同合意まで進捗状況すら行政にも降りてこなかった。農水畜産物・食品類については、コメなど重要5品目に関する一部方針が示されていた以外は、どのような品目が上がっているのかも分からなかった。今回開示された具体的な内容を見て、各界には大きな変化を前にした戸惑いもあるが、政府の言う「国家百年の計」ならば、もはや、この変化をチャンスにする施策を考え、進めていかなくてはならない。

 冷凍食品は、食品全体の中では温度帯で括られた、いわば横断的なカテゴリーとなるので、冷凍食品の関税をどうするということは将来もおこらないであろう。しかし、お隣のアイスクリームが現状の関税率21%~29.8%から6年で63%~67%削減、氷菓が11年目関税撤廃、さらにフローズンヨーグルトが26.3%、29.8%の現行から11年目に関税撤廃となる。日本では冷凍食品とアイスは個別の業界であるが、海外では統計等を見ても明らかで、同温度帯商品群として考えられている。隣で起こる変化が、将来、冷凍食品にも及んでくることが予想される。注視したい。

 さて、品目ごとに発表された「何年目」というスタート時期は、まずは、米国が議会承認を経て署名することが第一歩。さらに、来年1月以降、各国それぞれが国内の手順を踏んで、それが参加12カ国そろった段階から2カ月後がTPP協定の発効時期となる。もし12カ国が揃わない時期が2年間を過ぎた場合、承認済み国が6カ国以上、そのGDP合算が全体の85%になっているという条件で発効となる。スピーティにはいかないだろうというのが大方の見解であるが、最短は来春発効、ということだ。

 わが業界で考えると、調理品で取引の多くを占める中国、タイが協定不参加なので、市場に定着している既存の輸入製品に即座の影響はない。むしろ直近は、為替の動向が最大の関心事だ。冷凍野菜も然り。最大品目のポテトはじめ対象品目に上がっていない。また、将来加工食品全体に関税撤廃が及ぶとしても、食品に対する要求のレベルが高度な日本の消費者に、海外のメーカーが一朝一夕に対応することはできない、という推察もできる。しかし国内メーカーは奢ることなく、より消費者の要求に寄り添った製品作りを進めなくてはならない。
そして、この変革期にあたり、企業は自らの技術ノウハウを生かし、環太平洋12カ国・8億人のマーケットをにらんだ事業展開を志向すべきであろう。

 事実、業界各社の海外事業は今年も大きく進展し、大手に限らず中堅メーカーにもいくつかの動きがある。さらに多くの企業が視野を広げることで、飛躍のチャンスを掴むことができるだろう。TPP協定発効と共に、業界のグローバル化元年が訪れ、その品質レベルで一大経済圏の冷凍食品産業をリードする存在になれるよう願っている。

※本論説は、10月9日に農水省が発表配布した「TPP農林水産物市場アクセス交渉の結果」資料に基づいて記しており、結果一部冷凍野菜についての記述が誤りとなりました。お詫びします。しかし、同発表をもって「全面撤廃と言っていたがこの程度か」と感じた関係者は多いはず。品目を小出しにして「守った」成果を強調しようという思惑が感じられ、はなはだ不愉快。(10月20日)

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